海綿

私の父は、私が言うのもなんですが、本当に物知りでした。
昔、入社式の時、私は新入社員を代表して、答辞を述べる羽目になりました。
その時、父が原稿の手助けをしてくれました。
(実はほとんど父が作成してくれました、これ会社には内緒!)

その中に「エランビタール」という言葉が出てきました。
今でも、その言葉は鮮明に覚えています。
「おやじ、この言葉はなんや?」
「生命の躍進ぐらいの意味かのー」
難しすぎる、使わんでもいいと喧嘩したことがあります。
「なんでこんなことを知っとるんや?」
「そりゃ、お前より長生きしとるけーの」
と事もなげに言いました。

そして、やおら左手に巻紙を持ち、墨をたっぷり含ませて、
すらすらと筆を運ばせ、答辞を作成してくれました。
(達筆過ぎて読みにくい所は、私が鉛筆で小さく書き添えました)

年をとるという事はこういうことなんですね。
何十年というキャリアの中で、いろいろな知識を蓄え、
さまざまな技術や貴重な体験を身につけてくることなんですね。

しかし、父をして、今の携帯電話が日常生活の必須アイテムになることなど
夢想だにしていなかったでしょう。
(父は1974年、67歳で逝っております)

また、いかに時代の寵児といえども、
彼の生きた時代の中でしか物事を考えることしかできなかった。
過去から彼の生きているまでのさまざまな人的遺産を元に、
考え、行動することしかできなかった。

中国の偉大な思想家、荘子は地球が丸いという事を知らずして、
「鵬」という巨大な鳥を想い浮かべた。
(元、横綱大鵬の名前はここからきているのではないでしょうか?)

音のハーモニーを研究したピタゴラスは
バッハの「平均律クラヴィーア曲集」を聴くことは出来なかった。

ヘリコプターの完成を夢見たレオナルド・ダ・ビンチは
スペースシャトルで宇宙遊泳できるなんて夢にも思わなかった。

つまり、人はその時代の枠の中でしか生きていけないのである。

従って、年をとるということはこれから何十年先、何百年先の未来の
科学技術の発展や、たのしい本や映画などに
残念ながら出会うこともできないのです。

しかし、若者たちよ、あなた方は本当に幸せだ。
私たち年寄りが知っていること以上の知識を
これからいくらでも得ることが出来るし、
これから生まれてくるであろう、
素晴らしい作品にいくらでも出会えることが出来るのだから。

若いゆえに、「海綿(スポンジ)」のようにあらゆる知識や経験を
どんどん吸い取り、それをもとに様々の事にチャレンジできる。

なんと素晴らしいことか!

「老兵はただ去りゆくのみ」ではなくて、若人のために、
その手助けをしてあげなくはと思っております。
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プロフィール

Hocco21

Author:Hocco21
手前、生国と発しますは
芸州・ひろしまです。
小さい折から、太田川の
産湯を使い、
長じましては宮島の弥山を
眺めてその日暮らし、
年金生活をおくってます。
さあて、ここに
取りいだしたるは、
本や音楽のお話、
また、映画や写真の話題、
それに、楽しい話に、
くだらねー話と、もり沢山!
御用とお急ぎでない方、
さあて、お立会い!

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