一般論

今、尖閣諸島沖での漁船衝突事件で、
日中間、やや険悪な雰囲気になっています。
政治的なことはよくわかりませんが、こうした時に、とかく起きやすいのが
「中国人は……」「日本人は……」という非難めいた一般論です。
こうした世論がヒートアップすると、ちょっと怖い気がします。
全ての中国人が、全ての日本人が、そうではないということは
冷静になってみればわかることなのに…

先日亡くなられた井上ひさしさんのエッセイの中に、次の様な文章がありました。
『魯迅の五十六年の人生を貫くものの一つに「一般論は危険だ
という考えがあったのではないかと、私は思う。

「日本人は狡猾だ」、「中国人は国家(くに)の概念がない」、
「アメリカ人は明るい」、「イギリス人は重厚だ」、「フランス人は洒落ている」
といういい方は避けよう。

日本人にも大勢の藤野先生がいる。中国人にも売国奴がいる。
日本人とか、中国人とか、ものごとを一般化して見る見方には賛成できない。
彼の膨大な雑感文には、この考え方がつねに流れている』
(「わが人生の時刻表」井上ひさし著 集英社文庫)

魯迅は中国近代文学の泰斗。
「阿Q正伝」、「狂人日記」など素晴らしい作品を読まれた方も多いと思います。
その彼がまだ若い頃、1902年から09年まで、日本で留学していたそうです。
(※この間、日露戦争がありました。)

ここにある藤野先生とは、魯迅が書いた短編の随筆「藤野先生」の
中に出てくる先生ことで、それによりますと、
彼は留学中、仙台で、仙台医専(現在の東北大学)の
藤野厳九郎教授に医学を学んだそうです。

『「私の講義、ノートがとれますか?」とかれは尋ねた。
「どうにか」
「見せてごらん」
 私は筆記したノートをさし出した。
かれは受けとつて、一両日して返してくれた。
そして、今後は毎週持ってきて見せるようにと言った。
持ち帰って開いてみて、私はびつくりした。
同時に、ある種の困惑と感激とに襲われた。
私のノートは、はじめから終りまで、全部朱筆で添削してあり
たくさんの抜けた所を書き加えただけでなく、
文法の誤りまでことごとく訂正してあった。
このことがかれの担任の骨学、血管学、神経学の
授業全部にわたってつづけられた。』
(※そのノートは北京の魯迅博物館に展示してあるそうです)

後年、
『かれの写真だけは今でも北京のわが寓居の東の壁に、
机のむかいにかけてある。
夜ごと仕事に倦んでなまけたくなるとき、
顔をあげて灯のもとに色の黒い、痩せたかれの顔が、
いまにも節をつけた口調で語り出しそうなのをみると、
たちまち良心がよびもどされ、勇気も加わる。
そこで一服たばこを吸って、「正人君子」たちから
忌みきらわれる文章を書きつぐことになる。』
(「魯迅文集 2」竹内好訳 ちくま文庫)
(※「正人君子」とはエセ紳士のことをいう)


そして、彼の絶筆は日本人の友人に宛てた手紙で、
それには日本での彼の主治医を呼んでくれというものだったそうです。
また、彼のデスマスクをとったのも日本の医師でした。

この二人、魯迅と藤野先生には、「中国人だから、日本人だから」
という考えはなかったと思います。
学問をとおして、お互いの真摯なる人格にふれ、
共鳴しあってのことではないでしょうか?

このように、お互いが直にふれあい、話あい、胸襟を開けば、
やがて笑みも生まれ、お互いの考え、思いを
率直に話し合えるのではないでしょうか?

それなくして、○○人はどうの、△△人はどうのというのは
余りにも浮薄なみかただとおもいます。

こんなのもあります。「東京人は…」「関西人は…」「○○県人は…」
それぞれ、何万人以上の人がいて、
すべてそのような人で成り立っているのでしょうか?
納豆の大好きな大阪の人がいれば、大嫌いな江戸っ子だっています。

一人、一人の人間は全て、違った顔をもち、背丈も違い、趣味趣向も違い、
考えも違っていると思います。
だからこの世はおもしろいのではないでしょうか。
そして、奥が深いのではないでしょうか。

それを○○人だからと、十把一絡げにして、
非難することだけは避けて欲しいと思います。
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