ある一日を (補足あり)

子ども頃、床屋さんに行くと主人が長い革製のベルトにそって剃刀の刃を
一生懸命研いでいるのをよく見かけました。
そのカミソリで髪のはえぎわをすう~とそってもらうと気持よかった。
今にして思えば、砥石だと目が粗すぎて使い物にならない、
やはり革が良かったのではないかと想像しています。
人の肌にあてるのですから、それほど繊細な切れ味をもとめられるのでしょう。

切れ味といえば、短編小説の中にも、
そうした鋭い、しかし、剃りあとさわやかな作品めぐりあうことがあります。
短編小説って長い人生の中のある一日をすぱっと切って、
そのありようを描き上げるというのが一つの常法ではないでしょうか?

そんな素晴らしい小説にであいました。
「チェーホフ・ユモレスカ Ⅲ」(松下 和訳 新潮社)のなかにある、
「郊外の一日 ある小景」という、ほんの数ページの小説です。
したがって、あらすじは簡単です。

六つ乞食娘が、兄が木の窪みに手をはさまれて抜けないので、
いつも優しくしてもらっている靴屋のおじさんに助けを求めに行く。
雨に雷の鳴る中、靴屋のおじさんは娘の案内のもと森にたどり着き、少年を助けてやる。
無事に助けだされた男の子たち三人は、
鳥の話や蟻、ミツバチ、蒸気機関車など楽しい話をしながら村へかえる。
家を持たないその二人の子どもたちは村共同の納屋の一角で、二人寄り添って眠りにつく。
「あしたになったら、テレチーおじさんに話すんだ…」と想いながらー
そして、夜、これも宿なしの靴屋のおじさんは二人の枕元にパンを置いて去っていく。

この短編には彼らの社会的状況、村の様子、家庭環境などは直接的には何も書かれていない。
でも、読者にはわかるのです、恵まれない状況にありながら、
けなげに生きている子どもたちようすがー

小さくかわいい花を咲かせている野菊の茎を生花の裁ちばさみでなく、
床屋さんのカミソリですぱっと切ったら、その断面から、
野菊の成長していったある一日がわかるかもしれませんね。

補足
元会社の先輩から次のようなお話をちょうだいしました。
『いつか、行きつけの散髪屋で聞いたことがあります。
プロのひげそり用のカミソリは、形こそ昔のままですが、
今や交換可能で使い捨ての替え刃方式だそうです。』

どおりで最近、カミソリを研いでいる姿を見ないわけですね。
納得です! その一つに衛生上の問題もあるのでしょうね。
お医者さんでも、昔は注射針などを煮沸して使っていましたが、
今では1回毎に使い捨てですものねー
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芸州・ひろしまです。
小さい折から、太田川の
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眺めてその日暮らし、
年金生活をおくってます。
さあて、ここに
取りいだしたるは、
本や音楽のお話、
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くだらねー話と、もり沢山!
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