『マドンナ』
『マドンナ』
「ただいま~」
「あっ、おとうさんだー」
「今日は早かったのね」
「家の近くだから、直帰させてもらった!」
「まだ縫っているとこなんで、晩ごはんちょっと待ってね」
「うん、まだまだだいじょうぶだよ、それにしても熱心だね」
「お母さんは服作りのめいじんだよ」
「うん、お父さんの背広、愛ちゃんのスカートもみんなお母さんの手作りだもんね」
「それにしてもあなたの背広内ポケットあたりがそろそろほつれてきてるね~」
「なあーに、まだまだ大丈夫だよ、あっ、良くんから電話だ」
「良くんが新しいカメラを買ったんで見に来いとさ、ちょっと行ってくる」
「あっ、それだったらこれを持って行ってあげてー」
「なんだ、また梅干しと梅酒かー」
「二人はこれが大好きなの」
「わかった、じゃちょっと行ってくる」
「こんばんは」
「お義兄さん、いらっしぃ!」
「良くんは?」
「今、ベランダで大きなレンズで外を覗いているわ」
「やあ、お義兄さん、これですよ、600ミリの超望遠レンズ!」
「600ミリたあーすごいな!」
「ここから富士山山頂の山小屋まで見れるかもしれませんよ」
「そりゃ、ちとオーバーじゃろー」
「はあ~い、お義兄さんの好きなトワイニングのレディグレイよ」
「おお~、そりゃそりゃー、あつ、これ妙子さんに渡してくれって」
「まあ~、あ姉さんの梅干し、ありがとう、大好き!
なにせ亡くなった母直伝の梅干しですもんね」
「それにこの梅酒も天下一品じゃ、よろしゅう言うてください」
「それにしても、妙子さんも精が出るねー、家に帰ってもマネキン人形のデッサンか?」
「人はマネキン人形ってバカにするけどけっこう難しんですよ。
で、うちの人に頼んであのカメラで街の人びと服装だけでなく、
体型を撮ってもらって、調べているのー」
「なるほど、良くんの趣味がけっこう役立っているわけだ」
「おにいさん、カメラでよその家を覗いちゃイケンですが、
すじ向かいのお義兄さんのアパートを見るとバッチリですよ。
あれ~、お義兄さんの部屋に変な男がいますよ?」
「なにー、ちょっと、ほんまだー、パリッとしたスーツを着て、
あれれ~、愛子が抱っこされて、男の胸にハンカチーフをさしている。一体どうなっとるじゃ!」
「どれどれちょっと、見せて、ああ~、私がこの前作ったマネキンね。
お義兄さんの寸法をお義姉さんから聞いて、この前作ってあげたの!」
「ということは、あの背広は私のために作ってるということか~」
「所で、お義兄さん、お姉さんから聞いたんじゃけど、今日が何の日か知っている」
「えっ、9日?! わああぁ~、結婚記念日じゃー、こりゃーイケン、すぐ家に帰る」
「お義兄さん、その格好じゃどうせお金ももっていなでしょ、はい、これ!
お義姉さんにお花とワインぐらいどうですかね?」
「うん、ありがとう、明日会社で返すけー、
赤いバラと『マドンナ』という甘くてやさしいワインを買って帰る、
あっ、そうそう愛子の好きなザッハトルテもね、それじゃー」
「ああ~、靴もろくに履かないでー、でも、よっぽど嬉しかったんじゃね!」
「うん、お前の作戦は大成功じゃ、わしらもお義姉さんの梅酒で乾杯しょう!」
「ただいま~」
「あっ、おとうさんだー」
「今日は早かったのね」
「家の近くだから、直帰させてもらった!」
「まだ縫っているとこなんで、晩ごはんちょっと待ってね」
「うん、まだまだだいじょうぶだよ、それにしても熱心だね」
「お母さんは服作りのめいじんだよ」
「うん、お父さんの背広、愛ちゃんのスカートもみんなお母さんの手作りだもんね」
「それにしてもあなたの背広内ポケットあたりがそろそろほつれてきてるね~」
「なあーに、まだまだ大丈夫だよ、あっ、良くんから電話だ」
「良くんが新しいカメラを買ったんで見に来いとさ、ちょっと行ってくる」
「あっ、それだったらこれを持って行ってあげてー」
「なんだ、また梅干しと梅酒かー」
「二人はこれが大好きなの」
「わかった、じゃちょっと行ってくる」
「こんばんは」
「お義兄さん、いらっしぃ!」
「良くんは?」
「今、ベランダで大きなレンズで外を覗いているわ」
「やあ、お義兄さん、これですよ、600ミリの超望遠レンズ!」
「600ミリたあーすごいな!」
「ここから富士山山頂の山小屋まで見れるかもしれませんよ」
「そりゃ、ちとオーバーじゃろー」
「はあ~い、お義兄さんの好きなトワイニングのレディグレイよ」
「おお~、そりゃそりゃー、あつ、これ妙子さんに渡してくれって」
「まあ~、あ姉さんの梅干し、ありがとう、大好き!
なにせ亡くなった母直伝の梅干しですもんね」
「それにこの梅酒も天下一品じゃ、よろしゅう言うてください」
「それにしても、妙子さんも精が出るねー、家に帰ってもマネキン人形のデッサンか?」
「人はマネキン人形ってバカにするけどけっこう難しんですよ。
で、うちの人に頼んであのカメラで街の人びと服装だけでなく、
体型を撮ってもらって、調べているのー」
「なるほど、良くんの趣味がけっこう役立っているわけだ」
「おにいさん、カメラでよその家を覗いちゃイケンですが、
すじ向かいのお義兄さんのアパートを見るとバッチリですよ。
あれ~、お義兄さんの部屋に変な男がいますよ?」
「なにー、ちょっと、ほんまだー、パリッとしたスーツを着て、
あれれ~、愛子が抱っこされて、男の胸にハンカチーフをさしている。一体どうなっとるじゃ!」
「どれどれちょっと、見せて、ああ~、私がこの前作ったマネキンね。
お義兄さんの寸法をお義姉さんから聞いて、この前作ってあげたの!」
「ということは、あの背広は私のために作ってるということか~」
「所で、お義兄さん、お姉さんから聞いたんじゃけど、今日が何の日か知っている」
「えっ、9日?! わああぁ~、結婚記念日じゃー、こりゃーイケン、すぐ家に帰る」
「お義兄さん、その格好じゃどうせお金ももっていなでしょ、はい、これ!
お義姉さんにお花とワインぐらいどうですかね?」
「うん、ありがとう、明日会社で返すけー、
赤いバラと『マドンナ』という甘くてやさしいワインを買って帰る、
あっ、そうそう愛子の好きなザッハトルテもね、それじゃー」
「ああ~、靴もろくに履かないでー、でも、よっぽど嬉しかったんじゃね!」
「うん、お前の作戦は大成功じゃ、わしらもお義姉さんの梅酒で乾杯しょう!」
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